3人旅の始まり
「また来週、ブダペストで!」
こんな言葉、生涯で1度でも使う日本人がどれだけいるか。しかし、これは間違いなく、1週間前の日本国内(大学構内)で我々が交わした言葉である。
この旅行は本来、3人旅である。都合によりスポット参戦となったもう1人の友人・B氏が、ついに合流してくるのだ。
カタールを経由した我々2名とは違い、アエロフロート便でモスクワを経由してブダペスト入りしたB氏。道中、SIMカードを挿しても使えないというハプニングにも見舞われつつ、しかし全体としては順調に歩を進め……0時半ごろ、宿にて無事合流。1週間ぶりに、3人が揃うこととなった。
ここまで、毎日何かしらの迷走を繰り出している私とA氏。B氏にはどうにかパーティを引き締めていただきたいところだ。
感動の再会を果たしたので、一旦眠りに就くとしよう。Jó éjszakát(おやすみなさい)。
ブダペスト市内観光3
7:50、起床。睡眠時間は少し短くなってしまったが、何故かスッキリしている。ランナーズハイかな?
朝食。パン、ハム、サラダはいつも通りとして、ここにはお菓子が置いてあった。ジャム入りのクッキーをもぐもぐ。
今日の行き先はまず……
お洗濯である。
合流したてのB氏はともかく、私とA氏は旅行開始から1週間が経過。着替えの残弾が尽きてきたので、ブダペストから動かないこの日のうちに回復させなくては。
こんなことをしているので、B氏とは別行動である。合流したばかりなのに。
この店は「Self Service」とのことだったが、愛想のいいオバチャンが洗濯物を預かってくれた。これなら観光に行ってきても大丈夫だろう。
さてどこに行こうかな、と地下鉄でうろちょろする。
「Blaha Lujza tér:ブラハルーザ(女優の名前)広場」からメトロ2号線で「Deák Ferenc tér:デアークフェレンツ(政治家の名前)広場」へ移動。
B氏がいた。別れたばかりなのに。
せっかくなので3人一緒に回ろう。駅から徒歩5分。聖イシュトヴァーン大聖堂にやってきた。1905年の完成と、歴史あるブダペストでは比較的新しい建築だが、この街の象徴的存在だ。
ド派手な装飾に目を奪われつつ、中へ。
チケットをどうすればいいのか迷ったが、展望台行きのものを買えばOKだろうと、適当に購入。学生400フォリント。
壮麗な聖堂だ。宗教よぐわがんにゃいな我々でも、思わず見惚れる。
色鮮やかなステンドグラスもあちこちに見えている。
こちらは建築に関する紹介。設計当時のプランだろうか、図面などが載っている。
で、一通り見たのでエレベーターやら階段やらで登ってみる。
ええやん。
ブダペストの街並みが一望でき、向こうにはブダ王宮の丘が。近くにはErzsébet tér(エルジェーベト広場)の観覧車や、建物の隙間を縫うように進むトラムの黄色い車体が見えている。
今日も曇り空だが、この場所もやはり、青空であれば文句無しの絶景だっただろう。
ちなみに、観覧車の回転はめっちゃ速い。
地上に戻ると、近くに寿司屋を発見。昨日の中華料理屋にあった漢字に引き続き、「わさび」の3文字が何となく嬉しい。
握りや巻物などが並ぶ。「RUNNING SUSHI」ということは回転寿司なのだろうか……。
ところで、我々は何を食べようか。
B氏はハンガリーに来たばかりだし、やはり郷土料理を食べようということで、大聖堂から北へ5分ほどの「Csarnok Vendéglő(チャールノク ベンディーグルー)」に入店。
紅茶はセルフ。一緒にお茶菓子が出てきた。
グヤーシュ。パプリカチキンと並ぶ、ハンガリー料理の代表選手だ。
「ミネストローネとビーフシチューを足して2で割った」と言えば伝わるだろうか、肉と野菜の旨味がたっぷり詰まっている。どちらかといえばシチューよりスープ寄り。
このスープに加えて何かメインディッシュを……と考えていたのだが、メニューをめくりながらマジャル語の料理名を検索していた私はとんでもないものを発見する。
怖いもの見たさでそいつを注文、メインは頼まない。さて、何が出てくるか……
罪深さの塊みたいなの
出てきちゃった。
スポンジ生地+生クリーム+チョコソースとかいう甘味のバミューダトライアングルを擁するこの一皿。これでも、「ショムローイ・ガルシュカ(Somlói galuska)」というれっきとしたハンガリー料理である。
味は想像通りの危険物。非常に美味しく、めちゃくちゃ身体に悪い(一般的なケーキもバラせばこんな感じだろうけどさあ……)。そして満腹感も凄い。メイン頼まなくて良かったね。
お値段は合計で3930フォリント(≒1600円)。
腹ごなしに少し歩こう。トラムのケツでも追っかけ回しながら。
コシュート・ラヨシュ広場にある、アンドラーシ・ジュラ(二重帝国時代の初代首相)の像と国会議事堂。
後者は、Civ6プレイヤーなら「オーサカーツ」の名前で覚えているだろう。本当の発音は「オルサークハーズ」っぽい。
広場に沿う90°のカーブを通過していくトラム。ドナウ川を背に建つ国会議事堂を包み込むような線形になっている。
広場の最寄り駅、「Kossuth Lajos tér:コシュート・ラヨシュ(政治家の名前)広場」からメトロ2号線に乗る。
そのまま洗濯物を回収しに行く。乾燥もすっかり済んでいて、これでまた1週間戦える。
宿に立ち寄って洗濯物を部屋に置き、ついでにスーツに着替える。今夜もオペラの観劇予定だ。
ブダペスト市内観光4
時刻は14時半を過ぎたあたり。今夜も18時にはエルケル劇場へ辿り着かねばならない。
その間に、B氏の希望で登山鉄道に乗りに行く。
メトロ2号線で川を渡り、「Széll Kálmán tér:セール・カールマン(政治家の名前)広場」駅へ移動。トラムに乗り換えてさらに西へ。
「Városmajor:ヴァーロスマヨール(地区の名前)」停留所で下車。ここが登山鉄道への乗換駅だ。
構内踏切(?)を越えた先に……
登山鉄道のホームがある。
駅前に飾られている通り、この路線は全線でラックレールを装備している。相当な勾配を上っていくのだろう。
幅広なホーム。
登山鉄道は自転車の持ち込みが可能なようで、勢いよくホームに乗り付け、そのまま自転車ごと車両に乗り込む兄ちゃんを見かけた。
小柄で可愛らしい車両。側面のプレートを見る限り結構な老兵だが、シングルアームパンタグラフ付き。
車内も意外に洗練されている。打刻機は古そうだが。
16:03、出発。終点まで15分ほどの旅を楽しも
\ダガガガガガガゴゴゴゴ/
うるっせえ!!!!
ラックレールの振動と音はかなりのものだ。この旅行、何らかの形で纏めることを想定していたので、紙のノートをネタ帳として持ち歩いていたのだが、ノートに文字を書き込めないレベル。
しかも、終着駅に至るまで平坦な道が殆ど無く、ずーっと上り坂だ。「登山」鉄道の名の通り、トラムやメトロとは一味違った楽しさがある。
16:18、終点の「Széchenyi-hegy:セーチェーニ山」に到着。山の上だけあって肌寒い。
ここから3分ほど歩くと、子供鉄道の始発駅がある。
子供鉄道はその名の通り、10~14歳の子供が中心となって働いている鉄道(大人の補助はある)。ソ連の衛星国だった時代に子供の労働教育の一環として作られたらしい。
総延長は10km以上で7駅もあり、未だ現役で稼働しているというから驚きだ。
まあ冬季なので終電逃しちゃったんですけどね。
ガバガバ旅程の弱点は、こうした時間との戦いに弱いことである。繰り返しになるが、ヨーロッパの3月は冬季営業なのだ。色んな施設が早く閉まる。
大いなる宿題を残し、山岳鉄道の駅に戻る。
列車の入線を見届けてから乗り込む。なお、犬が線路内を闊歩していた。首輪付きなので野犬ではないと思うのだが……。
ここからは山を降り、トラムとメトロを乗り継いで、再びエルケル劇場へと向
\ガガガガガガグゴゴゴゴ/
あ゛ーーーーー!!!!!
17:48、何でか今日もギリギリ到着。
今日はここから。1つ前の区画はコンパートメントのようになっている。
演目は「コジ・ファン・トゥッテ」。腰パンは関係ありません。昨日が「カルメン」=悲劇だったので、今日は喜劇といこう。
コミカルなシーンでは劇場のそこここで笑い声が上がっており、和やかな雰囲気だ。舞台後の挨拶でも拍手に混じって指笛が鳴らされていた。フラッシュ炊いてるやつもいた。
なお、一番人気がありそうな反応だったのはデスピーナ(女中)。主人公格の男女じゃないんか。
また、昨日は舞台後方に鏡を置いていたが、今日は確認できなかった。ミュージカルのように、大規模なセットがあるわけではないが、やはり演目ごとに色々変えているようだ。
劇中で気になったのは第1幕のラスト、磁気治療のシーン。「磁気治療はドイツで生まれてフランス経由で伝わりました!」この話、18世紀のナポリが舞台なんですが、文化の伝搬経路としていいんですかね?チューリッヒとかインスブルックとか通らなくて大丈夫?
ドナウの真珠
公演後、夜ご飯をトルコ料理店で食べる。チキンが売り切れだったので別のチキンを頼んでみた。
本日も盛り沢山だったが、寝る前に夜景を眺めていくとしよう。途中宿に寄りつつ、メトロ4号線とトラムで「Fővám tér:税関広場」駅まで移動。
乗り換えて川沿いを北上。昨日見たBoráros tér停留所と同様、トラムが立体交差する停留所で、川に沿った路線はホームがトンネル内にある。雰囲気があっていいぞ。
4駅移動して到着。ライトアップされた、夜間のセーチェーニ鎖橋である。
少し右を向くと、マーチャーシュ聖堂の尖塔が輝いている。
橋を歩いてみよう。
同じようなことを考える観光客だろうか、橋の周りにはそれなりの人がいる。
光り輝く街並み。
そして対岸に渡ればブダ王宮。
いやはや、いいものが見れた。「ドナウの真珠」、堪能させていただきました。
……そういえば、今日は道に迷わなかったな……。B氏が合流したからか?