機内にて
夜1時ごろ。食欲をそそるにおいとともに、機内食の提供が始まる。
どうやら数種類のメニューから選ばせてもらえるようだ。私は和食をチョイス。
なかなか美味いし、ボリュームもしっかり。メインは若干スパイシーな風味で、箸が進む。
どうでもいいことだが、水が成田、めんつゆが土浦での製造とあって、元取手市民の私はちょっとほっこりした。まあ、成田空港あるからね。
今度は朝食。カタール航空の機内食はパンケーキが良いと小耳に挟んだのだが、おかずっぽいものを食したかったので卵&鶏グリルをチョイス。美味。
海外旅行での心配事の1つが「食」だったが、さすがは五つ星航空。順調な出だしだ。 おかげさまで「何だよ楽勝やんけ海外旅行」と早くも調子に乗る始末。
異国の地
現地時間にして朝6時頃。無事にドーハ・ハマド国際空港に到着。初めて踏む国外の土が、韓国でも台湾でもアメリカでもなくカタール。私の年代記に予想外の一文が刻まれることとなった。
とはいえ、周りは同じ便に乗っていた日本人で溢れかえっているし、空港はアラビア語より英語が前面に出ている。あまりアウェー感は感じず、さしずめ「『海外』体験版」といった趣だ。
さて、この空港はあくまで乗り継ぎ場所。ここからイスタンブールを目指すのだが、乗り継ぎ先の出発時刻までは8時間ほど空いている。
こんな時、カタール航空が提供しているのがドーハのバス観光ツアーだ。トランジットが5時間以上の場合に申し込めるツアーで、ドーハ市内の観光スポットをお手軽に回ってくれる。
アジア最大級のハブ空港内を思いっきり迷い歩きながらもカウンターデスクに辿り着き、鍛え上げた中学生英語でツアーへの参加意思を示す。なお一発で通じた模様。
空港の外に出ると、日本よりもずっと暖かい。20℃くらいだろうか。しかし湿度は低く、乾いた風が頬を撫でる。この日に限れば過ごしやすそうだ。
ツアー開始は8時とのことだったが、運転手がチンタラしていて遅れる。
「何やってたんだお前」といった様子で目くじら立て気味のガイドさん、それを「ハッハッハすまんすまん」とばかりに受け流す運転手。なんとも緩いツアーでよろしい。
ドーハ観光
いよいよバスが空港を出発。英語の解説を聞きながら景色に目をやる。
そう、英語。このツアー、当然ながら英語の解説だが、当然ながら聞き取れない。
ある程度の単語やフレーズを拾って、後は脳内補完したり諦めたりしながら何とかやり過ごす。
ドーハ市内は高い建物も多く、道も広い。だが、建物が未成の土地が多く残っていたり、道行く人が少なかったりで、開発し始めたばかりのA列車で行こうのような印象を受ける。
鉄道もまだ無いが、ドーハ地下鉄が計画されているらしい(その後、2019年5月に開業したとのこと)。
そんな、一部では「観光する場所じゃない」とまで言われているドーハだが……
なんだ、意外と見どころがあるではないか。特に市場(スーク・ワーキフ)は古くからの商業地を観光客向けに整備しているようで、買い物をせずとも異国情緒が味わえる。迷路のような造りが楽しいスポットだ。
初めて見る「海外」としては十分に楽しめる。というか、適度に緩いおかげで、却って海外酔いせずに済んだという面もありそうだ。
ヨーロッパへ
ツアーを終えて空港に戻ってきたが、まだ時間がある。
バカ広い空港内を探索しつつ、昼食スポットを探す。ちょうど昼時だ。
お昼はフードコートにて、このチキン甘いもの)をいただく。たぶんインド料理だろう(レシートを見返したら「ビリヤニ」って書いてあった)。スパイスが効いていてホットな仕上がりだが、その分食が進む。
お値段は日本円で1600円程度だろうか。金持ちの国、かつ空港内の値段と考えればこんなものだろうか?
14:15、ハマド国際空港を出発。乗り継ぎ先のB777は中東系の人が多く、日本人はさっぱり見かけない。海外っぽさが増してきた。
離陸から1時間ほどして、再度ご飯の時間。つい先ほどお昼を食べたばかりなのだが……夕食ということにしておこう。
こちらのチキンもなかなか。また、デザート枠でゴディバのチョコレートが付いていた。
現地時刻19時ごろ。夕陽が差すイスタンブールに到着した。カタールもトルコもUTC+3なので時差はないのだが、東端から西端への移動だ。イスタンブールは夕方でも明るい。
航空機から出、長ーい待機列に並んで入国審査を受ける。いよいよ「『海外』製品版」 だ。緊張からか、入国審査官の「How are you?」が聞き取れずに聞き返してしまう。クッソ恥ずかしい。
さて、今到着したサビハ・ギョクチェン国際空港(SAW)は、イスタンブールのアジア側にある空港である。
本日の宿はヨーロッパ側にあるため、市内中心地まで移動しなければならない。この時点では地下鉄の建設が完了していないため、バスに乗る必要があるのだが……。
ドーハとは違い、ガンガンに行き交う車。やたら多い人間。なかなか来ないバス。日本人の姿は無い。
いきなりアウェー感が増し、心細さを覚える。ついでにタバコの臭いもすごい。
20時半ごろ、やっとバスに乗り込むことができた。 A 氏が空港で作っておいた現金でお支払いし、新市街のタクスィム広場近辺まで運んでもらう。途中でボスポラス海峡を渡り、晴れてヨーロッパ着弾だ。 バンザイ!
初めての迷走
……。
……。
ここどこ?
タクスィム広場に着いたはいいが、そこから乗り換える地下鉄の場所が全く分からない。
焦る2人。SUBWAYの看板が地下鉄の入口なんじゃないかと本気で間違えたり、階段を降りてみたら鉄道でなく道路が走っていたり、大混乱だ。タクスィム広場周辺で宿を取ろうとしたのに変更してしまった我々のアホさを悔やむ。
「スマホで調べればいいじゃん」という意見はごもっともだが、実はこの時、私もA氏もSIMカードを有効化していないのである。緊急時はどちらか片方のSIMを有効化すればいいのだが。
あっちじゃないこっちでもないとタクスィム広場をうろつくこと15分。
サブウェイじゃなくてメトロだった。
やっと駅を見つけて安堵するも、駅には金属探知機のようなゲートが仕掛けられていて物々しい。私はこの後、ちょくちょく引っかかることになる。スマホ2台持ちなどが原因だろうか……。
まあ、引っかかった客もそれを調べる警備員も、さほど気にしていないみたいだが。
色々あったが、いよいよ鉄道旅行の本領発揮のお時間。
最初の乗車はこれ、ケーブルカーの「フニキュレル」・F1線である。タクスィムから海岸沿いのカバタシュへと降りていく。
続いて、そのカバタシュからはトラムに乗り換えるのだが……。今度は乗車券の購入で頭を悩ます。
カバタシュ駅の券売機に「1回券は買えません」「イスタンブールカードを作るとお釣りは出ません」のようなことを言われる。キレそう(キレない)。
唯一の救いは猫。
イスタンブールは猫の多い街と言われていたが、このカバタシュ駅で早くも発見。改札内などに入ろうとして、駅員に追い払われている。駅員は慣れた様子であり、猫の侵入が日常風景であることを窺わせる。
猫好きの私は大いに癒やされたのであった。
で、どうしようもないのでイスタンブールカードを作る。
要するにSuicaのようなプリペイド式カードであり、事前に券売機でチャージして使う。イスタンブールは地下鉄もトラムも改札があり、そこにタッチすればOKだ。
小銭がなかったのでそこそこの残額を突っ込んでしまったが、イスタンブールは旅行の終盤でまた来るので、無駄にはならない……はず。
乗り換え先はこの近代的なトラム・T1線。トルコ語では「トラムヴァイ」と呼ぶらしい。カッコいいなおい。
T1線はカバタシュが始発なので、ようやく腰を落ち着けることができた。
美しい夜景、賑やかな屋台の様子を横目に見ながら列車はイスタンブール市内を進む。やがてカラキョイを出、エミノニュを目指す。ここでガラタ橋を渡り、旧市
街に到達。
エミノニュの1つ先、国鉄の古いターミナル駅があるシルケジ駅で下車。
イスタンブールの夜は歌舞伎町かと思うほどに騒がしく、あちこちの屋台で飲食を楽しむ人の姿が見える。もう22時半なんですが……。
我々は明日も早いし、そもそも体力が残っていないしで、それらを全スルー。やっとの足取りで宿へとなだれ込んだ。
おやすみなさい
本日の宿は「Hotel Agan」。旧市街のホテル街の一角にあり、観光には便利な場所だ。
初めて丸一日を海外で過ごした日。長距離移動もあって、心身ともにさぞかし疲れていただろう。ベッドに潜り込むや否や、私はあっという間に夢の世界へと吸い込まれていった。