イスタンブールにて
翌日。泥のように眠っていた私だが、絶起することもなく爽やかな朝を迎えた。
ちなみに、この旅行では一切時差ボケを起こさなかった。生活習慣が元から酷かったからなあ。
バイキング形式の朝食を軽く食べ、スーツケースを宿に預けて外出する。
今日はプラハに移動するが、予約した航空便は17:35発。日中はイスタンブール市内を街歩きだ。
イスタンブールはとにかく賑やかだ。車、人、鳥、犬、猫。何だってたくさんいる。
特に、野犬が公園のあちこちで昼寝しているのは驚いた。日本だと野良猫よりマイナーなイメージだったので……。
鉄道関連でも面白いものを発見。地下鉄M2線のハリチ駅だ。
ハリチ(Haliç)、即ち「入り江」駅は、文字通り金角湾の直上に建てられた駅である。
イスタンブールは丘が多く、新市街の丘と旧市街の丘を結ぶM2線の線路が、ここ金角湾の部分でぽっかりと姿を見せているのである。
さしずめ、神田川上の東京メトロ丸ノ内線といった雰囲気か。あるいは銀座線の渋谷駅。
歴史ある街なので、史跡を見るのも楽しい。ハリチ駅近くにあるこれはガラタの壁か。ガラタ塔とは少し離れた位置にあるが。
ひと回りした後は旧市街で昼食。本場のケバブ(+サラダ)をいただく。ジューシーな肉が美味い。
チェコへ
食事を終えたところで、宿から荷物を引き取り、空港への移動を開始。今日使う空港はヨーロッパ側のアタテュルク国際空港だ。
なお、この空港はその後イスタンブール新空港へ機能移転を果たし、旅客便の運行を終了した。これが2019年4月6日のことだという。ドーハの地下鉄といい、ギリギリで「古い」時代を体験することに。
さて、空港へは2本の列車を乗り継ぐ。まずはシルケジ駅から、地下鉄の「マルマライ」に乗車。
これはボスポラス海峡を海底トンネルで横断する鉄道であり、イスタンブールのヨーロッパ・アジアを接続する役割を持っている。
トルコと日本の共同プロジェクトらしく、各所で大成建設の名前を確認することができた。
なお、この日は遅延していたようで、駅では混雑が発生していた。
オシャレな空間が広がるイェニカプ駅でメトロM1/M1A線に乗り換え。
この列車は旧市街のイェニカプ駅からバスターミナルのオトガル駅へ向かうM1本線と、そこからアタテュルク国際空港まで走るM1A支線を直通する。
比較的古い路線なので、クルマも小さめだ。荷物と身体を押し込めるようにして着席する。
メトロと言いつつ、地上区間もあるM1線。窓の外を眺めると、空港近くまで行っても建物が途切れない。イスタンブールの街の大きさを垣間見た気がした。
どことなくメタリックな感じのアタテュルク国際空港。サビハ・ギョクチェン国際空港より広く、うろうろと見て回るだけで時間を潰せる。
何故か知らないが、ここでは日本人だとバレると積極的に話しかけられた。「ホンダ・カガワ・ナガトモ知ってるよ!」とか、そういった調子だ。当時は長友佑都がガラタサライに、香川真司がベシクタシュJKに所属していたので、トルコ人にとっても馴染みがあったのは想像に難くない。
が、そういうネタで空港職員などが話しかけてくるのは驚きだった。人懐っこいのと、親日家が多いことの合わせ技か。
17:35、そんな楽しいイスタンブールを後にする。昨晩散々道に迷ったとはいえ、それ以外は危険な目に遭うでもなく楽しめたので、2人とも上機嫌だ。
フライトは2時間程度だが、国際便ゆえ機内食を出してくれる。
米がロングライスでないのが意外だ。少し塩が効いていて美味しい。パンも一緒についている。
なお、この航空便はターキッシュエアラインズ便だが、座席のタッチパネルの言語設定は上から順に「トルコ語」「英語」「日本語」……であった。何?日本大好きかお前???
現地時刻19時(UTC+1)ごろ、チェコ・プラハのヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ国際空港に到着。
大喧騒のイスタンブールに比べて、静かで落ち着いた雰囲気だ。入国審査官が同僚とお喋りしながらスタンプを押してくれ、無事に入国する。
イスタンブールは半日の滞在なので、A氏に現金を任せていたが、ここからは本格的に各国を回っていく。そのため、私も現金を作ることにした。
いくら替えればいいか検討もつかないため、ひとまず6000円ほどを交換。チェコの通貨単位はチェコ・コルナだ。当時も今も1コルナ≒5円程度のレートである。
たった今作った現金で、プラハの中心地まで出るシャトルバスのチケットと、3日間使える市内交通用のチケットを購入。合わせて370コルナ、1850円ほど。
無事にお買い上げしたのでバスを待つべく外に出たのだが……さっむい。温暖なイスタンブールと違い、ここはヨーロッパのど真ん中。現在の気温は4℃だ。コートの前をしっかり閉めておく。
バスから見える空港近辺の景色は、これまたイスタンブールと違ってど田舎の風景。
だが、中心地が近づくに連れ、多数の家々が立ち並ぶようになってくる。伊達に100万都市やってない。
再びの迷子
20時ごろ、バスはプラハ本駅近くに到着。数多くの国際列車が発着する、プラハで最大の鉄道駅だ。
さて、今日の宿は駅チカなのだが、駅は駅でもプラハ・マサリク駅(プラハ・マサリコヴォ駅)という別の駅の側にある。よって、ここからトラムを使ってプラハ市内を移動しなくてはいけない。
が、そこはさすがのポンコツ2名。慣れない異国の地で再び迷走を始める。
まず、トラムの停留所が分からない。
プラハ本駅は2階部分にホームや駅舎の中央入口があり、駅舎内で1階に降りると別の出入口があって、目の前に駅前広場(緑地帯)や駐車場が広がっているという構造になっている。
我々は「2階」(駅舎の中央入口前を道路が横切っている)で降ろされたのだが、トラムは「1階」にあったため、階層が違っていたのである。
15分ほどかかってこの事実に気付き、何とかトラムの停留所を探し当てることに成功。トラムに乗車する。
……。
……。
ここどこ?(Season2)
どうやら乗る系統を間違えたらしく、謎の場所に出てしまった。
地球の歩き方に付いているトラム路線図とにらめっこしたり、現地の警察官に道を尋ねたりしながら、頑張って移動する。
……薄々分かってきたのだが、地名が「読めない」のは結構キツい。「意味が分からない」のではない。「発音が分からない」のである。
「『みやこ』の東にあるから東京」という事情まで知る必要はないが、「とうきょう」という読みすら分からないと、路線図があっても迷うのである。
プラハには明後日夜まで滞在するため、少しはチェコ語に慣れておく必要がありそうだ。
おやすみなさい
21時ごろ。徒歩で10分程度の道のりをたっぷり1時間もかけ、やっとの思いで宿に到着。
本日は「Hotel City - Inn」に宿泊する。プラハ・マサリク駅に直結している、ステーションホテルといった様相のホテルだ。
設備は古めの印象だが、そんなことより我々の通された部屋を見てほしい。
屋根が斜めっている。天窓がある。これ屋根裏だよね?
いやまあ、窮屈さはそれほど感じないし、フロントのオバちゃんも愛想よく対応してくれたので、特に不満はないのだが。
ともかく、明日は長距離移動無しでガッツリ市内観光だ。またしても心身の疲労を溜め込んだ私は、さっくりと眠りに就くのであった。